人工妊娠中絶について
助産師の仕事をする前までは、助産師という仕事は生命の誕生をみんなで迎えて喜ぶお仕事だと思っていました。しかしお仕事をする中で世の中には望まれない妊娠もあるということを知りました。
今日は題名にもある通り、人工妊娠中絶についてお話ししたいと思います。
人工妊娠中絶とは巷でいう”赤ちゃんを堕ろす”ということです。
日本では年間18万件以上の人工妊娠中絶が行われています。10代の人工妊娠中絶が1番多いのかなと思いきや、実は20~24歳が1番多いとされています(39,430件)。そして30~34歳(35,884件)、 25〜29歳(35,429件)と続きます。(ちなみに10代は16,113件)。〈2015年度 厚生労働省〉
人工妊娠中絶を行う場合、どのような処置を行うか説明してきたいと思います。
人工妊娠中絶は週数によって処置の内容が異なります。
① 12週未満までの場合
② 12週から22週未満の場合 にわけて処置をします。
その前にみなさんに知っておいてもらいたいこと。
赤ちゃんは大体妊娠5週ごろには心臓が動き出します。妊娠12週ごろには胎児の形態や臓器はおおよそ完成しています。あまりピンと来ないかも知れないですが、もう12週で人間なのです。このことをみなさんに知ってておいてほしいです。
処置は流産の場合と人工妊娠中絶の場合、内容に違いはありませんが、大きく違うのは人工妊娠中絶の場合は保険適応ではないことがほとんどです。処置料の他に入院料も自己負担となります。そのため人工妊娠中絶を行う場合、処置前に必ず赤ちゃんの心臓が動いているかどうかを確認する必要があります。(これが本当に辛い、、、)
まずは妊娠12週未満までの場合を説明します。
処置はまず子宮の入り口を広げる処置をします。子宮の口を無理やり広げているわけですから、痛みも伴います。だいたい子宮の口を3時間程度広げてから子宮内容除去術(掻爬術または吸引術)を行います。ほとんどの場合は静脈麻酔をして行います。手術時間はだいたい15〜20分程度。痛みや出血もほとんど見られないので、体調がよければ日帰りです。
次に12〜22週未満の場合です。
先ほどと同じく、まずは子宮の口を広げる処置をします。そして子宮収縮薬を使い、人工的に陣痛を起こして赤ちゃんを娩出します。普通のお産と同じです。なので赤ちゃんが生まれるまで2.3日かかることが多いです。子宮収縮剤を投与してのお産なので、痛みも普通のお産のようにあります。生まれた赤ちゃんはだいたい20cmぐらいで体重は400g程度。しっかりと男女の区別もつきます。そして死産届と埋葬も必要となります。
わたしは今まで、中絶を選択する方の気持ちが全くわかりませんでした。妊娠することが奇跡で、ママのお腹の中で一生懸命生きているのに、なぜ殺してしまうんだろうと思っていました。でも中絶をするママ達と関わって行く上で、誰もしたくてしていることじゃないと気づきました。ほとんどのママ達が中絶の処置を終わった後、泣きながら赤ちゃんに謝っているんです。
今日本で選択されている避妊法のほとんどがコンドームだと思います。コンビニや薬局でも売っているし値段も安くて手に入りやすい。でもこの避妊法は男性側の協力があってこそなんです。男性がコンドームをきちんと装着しないと避妊できません。中絶を選択しなければいけなかった方達からよく、男性側がコンドームをつけてくれなくて...ということをよく聞きます。男性は望まない妊娠をしてしまったら、逃げる人(連絡がつかなくなったりする)人もたくさんいます。でも女性は逃げられない。痛い処置をしないといけないです。コンドームを装着して正しい避妊法をすれば、なくならなくてよかった命はたくさんあるし、女性の心も傷つかないと感じます。
学校での性教育では人工妊娠中絶のことまで教えてもらえないことがほとんどだと思います。この記事を読んで少しでも役に立てば幸いです。
わたしは助産師というお仕事は、全ての女性が自分らしく過ごすことが出来るようにサポートするプロであり、女性の代弁者であると思っています。まだまだ女性が弱い立場にあるということは変わりありません。少しでも助産師が身近な存在であると感じてくれたら嬉しいです。
望まれない妊娠が少しでも減りますようにと願いを込めて。
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